「ブーン」と低い音が耳のそばで鳴り、周りを見渡すとスズメバチが飛んでいる。すぐにその場から逃げ出したいのだが、そこは足場の上。頭の上にも敷板があり、今メッシュシートをかけて紐をパイプに括り付けたところだった。ちょうど自ら密室を作り出した状況なのだ。

「あー、しまった」ため息とともに、スズメバチを再確認し、メッシュを外せないかと紐に手をかけたが、「ブーン」と音がすると、逃げ出したくなる心境が高まり紐に手をかけれない。

結局、ハチに背を向けて、ゆっくりとハチと反対方向へ前進する。「ブーン」とまた音がする。こっちへくるな!!!と思いながら焦って進むので、頭の上の敷板に頭をぶつけて、今度は首に痛みがくる。

八方塞がりの状況で、冷静になろうと息を止めて少し休憩すると、音が止んだ。「ンっ?どこに行った?」と振り返って周りを見渡すと、どうやらスズメバチはメッシュの隙間から出て行ったようだ。

ちょうどここは軒下だ。ハチの巣があってもおかしくない。ここにはハチの巣はないが、メッシュの中の作業は、いつでもレイダース(映画のタイトル)のような状況になるのだ!